「The Courier/クーリエ:最高機密の運び屋」
クーリエ,,だけだと何を指しているのかぼんやりするけど,最高機密を,,まで副題にする必要あるかね,,英語nativeあるいは,英語に堪能な人でも含みのあるタイトル,くらいには思っても,ぼんやりしたままのはず.ただのクーリエであった,,ことが大切なんじゃないのかな,,って思うところあり.
冷戦,民間人が国家間のスパイに,,と聞くと,『Bridge of Spies』を思い出したけど,IMDbの情報によると,これらの作品で扱われている事象はある点でつながっている模様,,
さて,キューバ危機の話は,おそらく歴史の教科書にも載ってると思うけど(未確認),小説やら,映画の題材になりやすくて,そういう類のエンターテイメントにたくさん触れているので,自分の中のキューバ危機周りのイメージが,創作なのか事実なのか,全く整理されてない状態(ワタシが).
なので,,劇中の話だけにフォーカス.
シンプルにウェルメイドなドラマ.歴史的な事実であちこち抑えられているので,突拍子なことが起こることもないが,もたつきもなく,退屈することもない.人間関係にフォーカスされているせいか.終盤,多少転調があって,今から?という気がしたが,最後の着地のためのプロットだろな,,と納得した.たぶん,ストーリー全体は王道なのだけど,演出とかで魅せる作品(個人差あり).
ストレートなドラマと思ったが,民主主義推しの内容なのかな,,と(冷戦の敵側のイデオロギーに対抗する概念としてではなく).
==== ネタバレしてるョ (間違ってるかもだけど 笑)
冷静時のスパイものといっても,『Tinker Tailor Soldier Spy/裏切りのサーカス』(Benedict Cumberbatch出たな,そう言えば)とは違う方向性,
たぶん,,,よっぽど大外しで勘違いしていなければ,そのまま画面を追っていけば頭に入る展開.
クーリエ(運び屋)が行き来する一方は,MI6(UK),CIA(USA)だが,そのカウンターパートは,Oleg Penkovsky.
Khrushchev(フルシチョフ)の演説を背筋を伸ばして聞く共産党員達.皆,一様に同じ背広,同じネクタイ.
画面は,ずっと共産党員たちをなめて,一人,違うネクタイをしている男で止まる.この男が Oleg Penkovsky.この場面を素直に受ければ,他の共産党員とは違う人間,としての Oleg を端的に示している.
ネクタイはある意味大事で,味方,を識別するためにネクタイピンが使われていたが,このシーンとのつながりだろな,と.
では,,
わからんかったところ
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・little octobrist
Oleg は,仕事を終えて家に帰ったとき,娘にせがまれてバッジを胸につけてやる.little octobrist と娘が言っているので,十月党子供会バッジ? ,,ということでネクタイピンとの対比なのか,,と思うが,1960年の話なわけで,,このときも十月党はなにかしら意味があったのだろうか,,ソ連の歴史がさっぱりわからない,,
・ Oleg とい名
Oleg は,Greville に「英語での Oleg の響きは良くない」ので,Alexと呼んでくれ,といっているが,これは,i)自分でそう思っているだけ,ii)なにか英語での良くない意味の単語の発音と似ている,iii) 単にAlexと呼んで欲しいのを冗談めかしてそう言っている,,iv)その他,,のいずれだろう,,,
・ Greville が言う「キューバはどうなる?」
Grevilleがソ連のホテルへ戻ると,部屋が調べられている痕跡(辞書の置き方が違う)を見つけ,それをUKへ帰国してMI6+CIAに報告する場面.MI6によくやった,もう(Grevilleの)クーリエ任務は終わりにしよう,と言われて「キューバはどうなる?」と聞く.
この場面までで,Grevilleがキューバに関する話題,TVニュースなどに絡む場面はなかったように思っている.ただ,実際は,キューバのことが問題になっていたのを視聴者は知っている.
ミサイルの件はまだ報道もされていないから,Grevilleがキューバはどうなる,と聞くためには,Olegからキューバのことを聞いている or Olegからの情報を見ているということになる.
こうなると,,Grevilleは単なるクーリエではないことになってしまう.ここはポイントと思うのだが,,
いろいろ感想
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・MI6の偉い人
なんか見たことあるな,,と思ったら,,Qyburn(from Game of Thrones)!!!
もうちょっとなんか絡んでほしかった.ピンチのOlegを救うために,人造人間作ってソ連に送り込むとか,,
・Greville夫妻の関係
商談を終えて家に帰ったGreville.画面は,廊下から台所(ダイニング)と壁を隔てたリビングを映し続ける.
妻のShielaは台所で,Grevilleはリビングで話し続ける.あー,これは違う世界にいる二人だな,,と.正確にはこの時点では,過去の浮気を乗り越えた二人,であって,まだ別々の世界に分かれてないけど,物語はこの時の電話から,市井の人,と,冷戦国家間を行き来する人に分かれてしまう.
なもんで,,最後,何かしら,皆が同じ部屋に入るイメージで終わるのだろうな,,と思っていたら,明示的ではないにしろ,ソ連から帰国したGrevilleが,恐らく,妻と子供が待っているであろう部屋に深呼吸後,はいっていく,,という絵になっていた.
・ソ連の建物
シルエットが,わかりやすい長方形,直方体で,何かしら厳しい.威厳,みたいなもんだろうか,,
ハンガリーとチェコに行った時,街の中心地などで,画一的な同じようなドーン!というような建物を何度も見た.共産圏の特徴じゃなかろうかと.
・無愛想
もちろん,,1960年代と,2000年代では天と地ほど違うと思うが,受付みたいのところに座っているオバサンが,Grevilleに対して,何の愛想も示さないところ,,なんかわかる気がした.
これまた,ハンガリーに旅行に行ったときに,同じような場面で,何かしら愛想よくされたことがなかった.(若い人は別)
別にワタシが怪しげな東洋人だから,ということでなく,誰に対しても,ふんってな感じだった.(かなり,個人的な視点)
・ Olegたちの最初UK訪問.
映画館の看板をみると『Girls! Girls! Girls!』というプレスリー映画上映中.1962年の映画なので,タイミングはバッチリ.退廃文化の象徴,ということだろうか,,笑
まさに車の中でそういう意見を同志より向けられたOlegだが,表情は,その活力ある文化に魅了されている,,ような感じだった.
The Sound of Musicってのも見えたが,映画はもっと後なので,ミュージカル,としての看板だろうか,,
そして,酒場シーンのBGMが Let's Twist Again(by Chubby Checker)で,なんか,1960年のUKってより,ふつうにUSAっぽい.ブリテッシュインベイジョンの前はこんなだったのか.
→ さて,Let's twist again.この歌,1962年にUK No.2 までいってるので,,時期的に流行ってたのは間違いなさそう.
→ 1962年UKチャートを見たら,年間で4曲計15週もプレスリーがNo.1になってる.大人気だったんだな,,
・ KGBの盗聴
勾留されて6ヶ月後,Grevilleは,Olegに引き合わされる.ここで,KGB側は二人きりにして放置プレイ状態にするが,,当然,二人の会話は盗聴している.
が,,これは,,,何を盗聴しようとしていたのか.Olegはもう白状したことになっているので,あとは,Grevilleから,知ってて運んでいた,という言質を取り,Grevilleを処刑(死刑)にするのが目的だったのだろうか,,
一応,劇中で,まさに,わかりやすく,こういう場合はこうなる,とOlegがGrevilleに説明しているシーンがある.
捕まれば処刑されるだろ,と言うGrevilleに対し,Olegは自分は間違いなく処刑されるが,お前(Greville)は,ただの「運び屋」であれば,人質交換のコマとして勾留されるだけだ,と言っている.まさにまさにそうなった.
だからタイトルが(ただの)運び屋,なんだろう.上で少し触れたが,Grevilleが運んでいる機密の内容を知らないのがポイントだと思うのだがどうだろう.
・ Emily の象徴するもの
UK舞台の物語で,CIAとして出てくるのだから,普通にアメリカ,なんだろうけど,全体的にもアメリカだな,,という気がした.
まず,冒頭の登場シーンからして,抜群にファッショナブルでお堅い仕事の場には美人すぎるビジュアル.笑
彼女は,若くて,美人で,すれ違った男が振り向くような女性.仕事にぐいぐい前向きで,結果を追求するためには人の心を操ることも全くいとわない.ためらうGrevilleに対し,キューバからミサイルが発射されて届くまでの4分で家族を救えるか,,と,家族を出して,仕事の意義を説く.
MI6側が,Olegの救出に危険すぎると慎重になる(大人の対応)のに対し,今度は,自分たちの危険も顧みず,ぐいぐい人道的見地から救出を説く.
つまり,万事,大人な慎重なUK側に対し,良くも悪くも振れ幅が大きい彼女は,欧州とアメリカの動きの縮図のように思えた.
なので,彼女はアメリカだ,と思ったのだ.
このトピックスとは違うが,彼女が,Shielaに対して行ったアドバイスは,めちゃくちゃ的確だと思ったな,,Grevilleが無実だとまわりに訴え続けよ,と.
・白鳥の湖(逃走直前のバレエ鑑賞)
ワタシのような人間でも,曲を聴けばこれだとわかる.
呪いにかけられた女性が,ついに真に愛する男性との愛の力でその呪いを解いて自由になる,という話(ざっくりしすぎ,,) と理解している.
物語のどの部分の舞台が映っていたのかわからないが,普通に考えれば,その自由になる瞬間だったのでは,,だからこそ,二人は自分たちの境遇を重ね合わせて涙を流していいたのではないか.
ちなみに,,ふたりともBravoって言ってたけど,やっぱりソ連でもイタリア語で言うのかしらん,,
・ Grevilleの変化 どんどんと(詳細はわからないが)スパイとして危険に身を晒していくにつれて,体を鍛え始める.これはきっと極度に生存本能が刺激されて,鍛えずにはおれなくなるのではないか.また,あっちの方も積極的になる.これも同様の理由じゃなかろうか.
同様の状況に身を置いたことはないが(笑),すごくわかる気がした.
あと,なんせ命の危険と背中合わせ,という認識があるので,何にしてもミスは許されないと思い始め,子供がキャンプに必要なものを忘れる,という「想定外」のことにどなりちらすことになる.
このあたり,ホントにメンタル強い人は,それが切り替えられるのだろうな,,素人には無理.
・ カンバーバッチお前もか!!
10kg近く痩せたそうな,,,確かに,げっそりしててリアルだった.(手が,,結構綺麗なままだったのはちょっとどうかな,と思ったけど)
痩せると言えば,『The Machinist』だが,すごい体に負担がかかるようなので,もうせいぜい10kgくらいでやめといて,と言いたくなる.
・ 『Bridge of Spies』との関係
Olegの予想通り,Grevilleは人質交換で帰国した.この,交換,の相手は,USAで,Rudolf Abelとスパイ活動をしていたが,この Rudolfが『Bridge of Spies』での,USA側の人質らしい.
・GrevilleとOleg
Olegは,冷静に見て,ソ連側から見れば国家機密を敵国にバラしているのだから,罪人であることは間違いない.
実際のOlegはどうか知らないが,この映画では,彼は,敵味方を超えて,人類が安全に暮らせる地球,を考えていた.
OlegはAndrew(Grevilleの息子)に,「両国の政治家たちは憎み合っている.でも,それぞれの個人(自分と君のお父さん)は,一緒にビジネスをしている(意味としては,憎み合うどころか友達だ,ということだろう.ビジネス=上辺の付き合い,としてしまうと,意味が通らない)」 と言っている.
これは,ほんとにそうで,ある国が嫌い(というのも,なんだかな,という気がするが)というのと,その国の人(個々人)が嫌い,というは全く違うことだ.大抵は.その国のトップのとっている政策などが気にくわない,ということであって,個人個人は,いってみれば会ったこともない人だろう.それを一緒にしてしまってはあかんな,,と思う.
国のトップは選挙で選ばれた,国民の総意だろう,だから,国もその国の人も同じ,というのは違うと思う.悲しいかな,我々の国のトップも,国民の総意であることをしているかというと程遠いと思う.
十把ひとからげに,ある国の人全部を憎むというのは,ほんとに,,なにばかなこといってんだ,という気がする.
脱線した.
Olegは非常に正しいものの見方をしているように描かれている.また,Olegは,今は,たった我々二人,かもしれないが,物事が変わっていくのは,こういうことからスタートするのだ,という趣旨のことをGrevilleに言っている.
Grevilleは何度も彼と会ううちに,Olegが,世界を変えようと,それに命をかけていることを理解し,尊敬し,強い友情を感じるようになった.でも,Greville はそれが何かはわからない.彼は単なる運び屋でしかないから.
Grevilleは,全て終わり(Olegを見殺しにする)だというMI6とCIAに対し,Olegは,自分を見殺しにはしない,と断言する.
そして,,GrevilleもOlegも捕まってしまう.
Olegは,Grevilleに対して許しを乞う.つまり,Olegは家族を助けるために,彼の方の事実をすべて白状してしまっている.今,Greviileがここに留め置かれているのは,Olegが,機密情報をGrevilleに渡していたことを認めたから,,だ.
Olegは続ける.Grevilleに渡していた情報の中身は,キューバのミサイルの位置を教えるものだったんだと,それほど大事な情報を何も知らない君に渡していた,と.
Olegは絶望している.国を裏切り,周りの仲間を裏切り,,やってきたことがすべて無駄になった.世界をより安全な場所に,というのぞみは達成できなかったからだ.
Grevilleは,それを聞いて,感極まる.
まず,,OlegはGrevilleを見捨てなかった.自分のことを単なる運び屋としてかKGBに伝えていない.そうであれば,人質交換のコマとして生き続けることはできる.そして,なによりも,Olegが言っていた世界を安全な場所に,というのは,キューバのミサイルをなんとかすることだったと理解するのだ.
Grevilleは1年前,面会に来てくれたShielaから,キューバのミサイルは撤去されたと聞いて知っている.つまり,Oleg(と自分)の望みは叶ったのだ.
Grevilleは一語一語に力を込めて言う.君のおかげで,ミサイルは撤去されたんだ,と.君はやり遂げたんだ,と.盗聴していたKGBがすぐに,Grevilleを取り押さえに来る.
連れて行かれるGrevilleが「君のおかげで,,,」と繰り返すのを聞いて,呆然とするOleg. 命をかけた行いは報われた,,無駄ではなかったのだ.
ワタシは,この最後のGrevilleとOlegの会話ですべてが結びつく,,という流れだったと思っているけど,,どうかな.
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