「The Dropout S1E8/ドロップアウト~シリコンバレーを騙した女 シーズン1 エピソード8」
大変面白く観ていたが,ずっとElizabethのモチベーションというか,行動原理みたいなのがしっくりきてないまま終わってしまった.
どこかで変わったのか,首尾一貫していたのか,,,ただ,最後は人として醜悪なところがフィーチャーされて終わった感じ.
最初のしあがるといころはそれなりにイケイケであっても,最後はしょぼんとなる内容というのはわかっていたわけで,それ前提で観ていた人はイイけど,そうでなかったらカタルシスはあんまりなかったのかな,,という気がした.
ドラマのつくりとして,最大限Elizabethが糾弾されるべきところを,わざと隠して,最後にチクッと刺してみた,っていう感じがするけど,その時に,観ている人はそうだった,そこだった,と思わせる,という趣旨だったんだろうか.
==== ネタバレしてるョ (間違ってるかもだけど 笑)
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)誌に記事が出て,ElizabethとSunnyはその対応に追われる.
Elizabethは,各ボードメンバに連絡し,自分への糾弾を,女性全体への差別,女性が活躍することへのやっかみであると論点をすり替えて,不当な記事であると訴えた.
その甲斐あって,ボードはElizabethの味方についた.
WSJでは,Theranos社側がだんまりを決めて,皆が忘れるのを待っているとして,引き続き記事を出し続けようとする.Tylerに連絡を取ろうとするが,,取れない.
Erikaは,今度は自分の名前を出して CMS(Center for Medicare and Medicaid Services)へTheranos社を調査すべき,と訴える.CMSはWSJと違い,Theranos社のラボを停止できる.
その決意にTylerも心を動かされる.Georgeに記者に連絡をとったと前言を翻し,ボードメンバで最初にElizabethを糾弾する人になるべきだ,とGeorgeに進言する.GeorgeはTylerを追い出した.
CMSからの査察官はラボを視察し,,2年間のTheranos社の研究所の業務停止を命じる.(2016年2月)
ElizabethとSunnyは互いに責任をなすりつけ合う.一旦,Elizabethは共同戦線を張ろうと見せかけるも,Sunny不在のボードミーティングで,Sunnyが会社を退くことを報告してしまう.
Sunnyは一方的に責任を押し付けられた形になり怒り心頭となるが,Elizabethは意に介さない.そして,公私に渡るパートナーシップを一方的に終わらせてしまう.
Elizabethはメディア上で,インタビューを受けるが,その対応はとても世間を納得させるものではなく,自らの両親も失望するようなものだった.化けの皮がはがれ,皆がそれを認識した瞬間だった.Georgeも失望したのだった.
誰もいなくなったオフィスで,ElizabethはLindaに破産対応を進めることをアドバイスされるが,新しい犬と,新しい恋人の話をしてLindaを失望させる.
ElizabethはLindaから,自分が何をしでかしたか,と問われて,自分は新しいテクノロジーを届けることに失敗した,というが,Lindaに,あなたは,人を傷つけた,と言われ,耳をふさいでしまう.
責任をまっとうすることなく,CEO Elizabethというアイデンティティを捨てる.もう,新しい人格Lizzyで生きることしか関心がなかった.
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・Elizabethの最大の問題点
投資家に対する詐欺であるとか,人に対して冷血だとか,ネガティブなことはたくさんあり,ドラマはそこにずっと触れながら,最後,女性起業家Elizabethワールドの崩壊まで進む.
しかし,本当に糾弾されるべきことは,Lindaが要約したように,信頼性の低い検査結果を提供し,被検者である人々に危害を(おそらく)加えた,ことだろう.
ドラマでも,Erikaなどが憤ったのはその観点であり,自殺してしまったIanが懸念したのもそこだ.
しかし,あえて,そこはフォーカスを当てずにドラマは進んだ気がする.もしかすると,視聴者にもそこはある意味忘れさせて,口八丁で,金持ち爺さんをだまくらかして,うまくやってた,くらいの印象を持たせていたのではないか.そして,最後にLindaに「You hurt peopel.」と何度も言わせることで,視聴者に改めてそこが問題なんだ,と気づかせるという構成だったのではないか.
ちなみに,,Elizabethは,耳にイヤホンを突っ込んで文字通り耳をふさいで,聞かないようにしている.
・Elizabethの勘違い度(もしくはポジショニング)
- ハイテク会社は,いろんな規制に従っているとイノベーティブなことはできない.
- 自分を批判するやつは女性差別者だ.
- なにか起こってしまったことは,さっさと忘れて先へ進め.(学生時代,暴行を受けたことに対して母親がアドバイスした)
ただし,自分が他社に対して何か良くないことをしてしまったかどうか,という観点で,まるで違う事象.
自分の会社が嘘の検査結果で人の健康に危害を及ぼした(かもしれない)ということに関して,単に忘れて前に進む,ということは許されない.
・Tylerの親が払う legal fee
家を売るくらいのlegal feeを払っている,ということだったが,,これは,,何のため? 弁護士を雇っているから??? Tylerは訴えられているのか?? まだ名前は公式には出てないのに??
・Sunny vs. Elizabeth
旗色が悪くなり,Sunnyは弁護士に身の振り方を相談する.Elizabethがそれに気づく.
SunnyはElizabethに「昔のメールを見ると思い出すよ」みたいなこと言う.これは,全部記録は持っているぞ,という,ある意味脅しだろう.
Elizabethは,もっとしたたかで,えーと,なんかやばいことしてたっけ,ワタシは知らないけど,ワタシの知らないところで何かやらかしてたの?,みたいな事を言う.これは,ワタシはその線で対抗するわ,ということで,簡単には屈しない.そのあと,基本,Sunnyが自分に惚れていることを使い,一蓮托生みたいな雰囲気を出して,二人で頑張ろう,ということに持っていく.
しかし,,翌日,Sunnyがおきたら,ボードミーティングで勝手に,自分が責任を取って会社を退くことにされていた.おそるべし,Elizabeth.
口論の末,Elizabethは出て行くが,そのときに,最終的にSunnyは「I won't hurt you.(オレは君を傷つけはしない」と言う.
これは,まだ愛しているから,,とかいうものではないはず.
もう完全にElizabethという人間を理解し,人間として虚無である,ことを見抜き,あきれ,自分が何をしなくても,世界がElizabethを罰する,と知っていたからだろう.
・Elizabethの服装
ある時点から彼女は,上下,黒ばかり,,だ.なんとなく,,Steve Jobsの黒ジーンズ,黒タートルネックにあやかってる感じはあった,,が,,
メディアのインタビューのあと,黒のセーターを脱いで,ほっと息をつく場面がある.あの時点で,,もう終わった,このキャラ終わり,と思ったのかな,と.直後のベッドのシーンでは,当然,,白シャツで年下の恋人と楽しそうにしている.
・WSJの対応
CarreyrouのPCが会社側に取り上げられる.これはなぜか,,おそらく,,Litigation hold(文書保全)のためのものだと思うが,,
訴訟では,ディスカバリ,という制度があり,お互いに関連証拠を提出する必要がある.(この作業の工数が大変で,原告,被告自身の対応も必要だが,間に入る弁護士の工数も大変なものになるので,その弁護士費用だけでも,数千万円は軽く飛ぶ)
たとえば,Theranos社が名誉毀損でWSJを訴えるとすると,Carreyrouの記事に関する社内のやり取りを全部出せ,とか言われる.
意図としては,例えば,,匿名のタレコミによりこんな事実があった,と記事に書いていたとしても,実際は,WSJ社内ででっち上げた内容だったはず,とTheranos社が考えていれば,記事のための資料で,内部で,でっち上げで行こうぜ,みたいな記録が残っているかもしれない,,それを明らかにするために要望するわけだ.
簡単に言うと,記事を書いたCarreyrouのPCはディスカバリで持っていかれるし,おそらく,その上司のJudithのPCも持っていかれる.
(ディスカバリをうけて,ワタシのPCのHDDがもっていかれそうになったこともある)
さて,,そのときに,これみつかったらやばいわ,ということで,削除していたとする.今,いろんなツールが有り,削除したこともわかってしまうので,あるはずのものがない,とわかると裁判ですごく不利になる.
なので,,ディスカバリをかけられたときのために,関連の資料は完全に保全しておく必要がある.
WSJはそのために,CarreyrouのPCを一旦コピーしようとしていると思う.
誰も読まんであろうことを延々と説明した,,笑
そうそう,,誰もいないTheranos社でシュレッダの紙くずが散乱してたのは,証拠を隠滅していた,と思われる.
繰り返すが,ドラマ自身よりも,ドラマで扱う内容が,ある意味身近な事が多く,勝手に緊迫して見入ってしまう内容だった.
どれだけ事実に即しているかわからないが,一般的な意味で,沢山の人が騙されて被害を被った,のに加えて,それが医療業界の詐欺的行為で,人の健康に直接危害を及ぼした,ということでとんでもない事件だったな,,と思う.
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