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2022年9月24日土曜日

[映画] Athena/アテナ


「Athena/アテナ」


  

  ギリシャ映画か,,でもフランス語みたい,,なんで,,いやいや,パリ郊外にAthenaというところがあるらしい.で,さらにギリシャのアテネはAthensだった(恥).

 映画は約半日ほどの出来事を100分程度でビシッと語り切る感じ.

 一般には,長回し(風?)のカメラワークとかが真っ先に語られそうだけど,物凄くシンプルな社会的なメッセージの映画だと思った.
    

 ==== ネタバレしてるョ (間違ってるかもだけど 笑

 

・フランス 軍人 (英雄) アブデル

 末の弟(イディール)が何者かに殺された.広まった動画を見るとどうやら警察の仕業のようだ.そんな緊迫した状況で,故郷に呼び戻され,警察署で記者会見する.
 彼らはアルジェリア系移民だ.

・弟カリム

 その記者会見会場で,火炎瓶を投げ,混乱に乗じて武器を奪い,自分たちの住居地区に戻る.
 暴動のリーダーだ.

 カリムは弟を殺した警察が許せない.犯人を出せと要求する.警察は,極右グループがやったもので警察ではない,と回答している.

・兄モクタール

 アブデルたちとは腹違いの兄.麻薬犯罪に手を染めていて,隠し持っている麻薬を外に安全に持ち出すことしか考えていない.

・暴動

 暴動は激化し,騒ぎを治めるためにアテナ団地に入るアブデル.その間に警官が一人人質になる.
 人質を傷つけては,カリムたちの命も危ない.アブデルは説得しにカリムのもとへ行く.
 しかし,カリムは警察(?)に射殺されてしまう.

 怒ったアブデルは,警察側にカリムを撃ったやつを出せ,と警察に要求する.そうでないと,人質の警官を殺すと宣言する.一度は救い出そうとした警官を,だ.

 爆弾のエキスパート,セバスチャンは即席の爆弾をあちこちに用意する.

 自分のことしか考えないモクタールを殴り倒したアブデルは,絶望的になる.

 残されたものに,降参するなら今だと愉し,皆はそれに従って投降する.

 確認のために警察が団地に入った頃,セバスチャンの爆弾が爆発する.

・フラッシュバック

 イディールを殺し,動画を撮影した連中は,警官の制服を着ていた.それを脱ぎ捨て,森で制服を焼く.彼らは白人至上主義者だった.
 イディールを殺したのは警察ではなかった.

  ===

・カメラワーク

 カメラワークがすごくて,いまどきなんでもできそうだけど,やはり驚く.

 最初の警察署襲撃から逃走まで一気に見せる.

 逃走する車の中を映し,そのまま,車と並走する形でカメラは外に出て,ぐるっと車の周りを回って,また,車の中に入る,,,これが最初のアクロバティックなカメラワーク.

 続いて,カリムたちがアテナ団地に戻り,カリムが屋上から階下を眺めたとき,,そのまま,カメラはスムーズに空中に出て,その屋上に立つカリムをとらえ続ける.

 この,空中に浮かぶ? カメラワークがこの後もどんどん出てくる.

 そして,この長回し(風)が,やはり緊迫感を出す.すごく.

 何が起こっているかを映す場合もあるけど,ある特定の人物をとらえ続け,直接その人視線の映像にするわけではないけど,その人物を追うことで,その周りで起こっていることを間接的に描く感じ.

 アブデル,カリム,人質になる警察の一人,,などが,その半主観画像の人となる.

・アルジェリア系移民

 パリのアテナ地区がどこかあまりわからない.歩いたこともあるかもしれない.
 映画を見ると,あの団地はほとんどアルジェリア系の方がかたまって住んでいるように見受けられる.

 同じ文化基盤を持つ人が一緒に生活するのはそれはそれで安心できるし心地よいものだろうと思う.一方で,その中にいて,外部とのつながりを持とうとする気持ちがなくなると,,すこしやっかいな存在になりうる.
 この映画ではまさにそうだ.アルジェリア系の方はきっと差別を受けているのだろう.それだから彼らは,より,団地内の繋がりを強固にする.
 外の世界と繋がりを持つ人もいるが,それにはある一定の「レベル」みたいなものが必要になる気がする.

 そのレベルを超えるのは,,やはり教育だと思うが,,簡単じゃないのだろう,,

・極右

 カルト,を生み出した国はフランスだ.自由博愛平等,民主主義のお手本のようなキーワードがシンボルではあるが,マイナスの面でも先駆者だ.

  冒頭,警察からの襲撃を終えて逃走するとき,フランス国旗を掲げている.フランス人,という気持ちはあるが,警察が許せない,という立場なのだろう.

  警察は,再三,イディールを殺したのは極右のグループだという.カリムは信じられない.きっと,これまで警察に信頼をおいてないから,,だろう.

 また,カリムも殺されるが,警察はこれまた極右グループのやつ,汚職警官が勝手にやったとか,色々言う.アブデルも頭にくる.

  しかし,,映画のラスト,イディールの殺人について種明かしがある.

 犯行に及んだ連中の一人の首には,ケルト十字の入れ墨がある.そう,こいつらは,白人至上主義者だ.彼らは,当然,アルジェリア系移民のアテナ地区の連中を憎んでいるだろう.

 アテナ地区の連中が警察をよく思っていないのも知っている.つまり,警察のフリして,警察とアテナ地区を戦わせよう,,という作戦で,その筋書き通りになってしまったということだ.


  分断を煽るやつはいる.社会が壊れることを狙い,その中で自分たちが台頭することを考えている.

  この映画は,ある兄弟に起こる悲劇を描いているが,フレームワークは,社会の分断だろう.(兄弟の中でも分断はあったかもしれない)


 このような手に乗せられて憎しみ合ってはいけない,という警鐘なんだろう.


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